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東京地方裁判所 昭和63年(ワ)1372号 判決

原告 阿部写真印刷株式会社

右代表者代表取締役 阿部秀一

原告 田中誠一

右両名訴訟代理人弁護士 佐久間哲雄

同 若林律夫

被告 室伏哲郎

右訴訟代理人弁護士 秦康雄

同 佐藤厚男

被告 東京書籍株式会社

右代表者代表取締役 小高民雄

右訴訟代理人弁護士 濱野英夫

同 伊藤真

主文

一  被告らは、原告田中誠一に対し、各自金一〇万円及びこれに対する昭和六三年二月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、原告阿部写真印刷株式会社に生じた費用と被告らに生じた費用の二分の一を原告阿部写真印刷株式会社の負担とし、原告田中誠一に生じた費用と被告らに生じた費用の五分の二を原告田中誠一の負担とし、被告らに生じたその余の費用を被告らの負担とする。

四  この判決の第一項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告らは、原告阿部写真印刷株式会社に対し、各自金七一五〇万円及びこれに対する昭和六三年二月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告田中誠一に対し、各自金六九六万円及びこれに対する昭和六三年二月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一1  当事者と各著作物の著作出版について

(以下の事実のうち、(一)、(二)、(四)の各事実は、原告らと被告室伏との間において争いがなく、(一)の原告会社が本件雑誌を出版した事実及び(四)の事実は、原告らと被告会社との間において争いがない。争いのある事実は、証拠(丙一、三、五の一ないし五二)と弁論の全趣旨により認める。)

(一) 原告阿部写真印刷株式会社(以下「原告会社」という。)は、昭和四八年に、版画に関する作家、作品、技術等の情報の紹介を内容とする季刊の雑誌「版画藝術」(以下「本件雑誌」という。)を創刊し、昭和六二年までに、一号ないし五八号の本件雑誌を出版した。

(二) 原告田中誠一(以下「原告田中」という。)は、原告会社の従業員であった者で、本件雑誌に掲載する写真の撮影をしていたが、昭和五五年に原告会社を退社した。原告田中は、退社後も、本件雑誌に掲載する写真の撮影をしていた。

(三) 被告室伏哲郎(以下「被告室伏」という。)は、本件雑誌の編集に携わっていた。

(四) 被告室伏は、「版画事典」(以下「本件事典」という。)を著作し、被告東京書籍株式会社(以下「被告会社」という。)が、昭和六〇年九月に本件事典を出版した。

2  本件は、原告らが、本件事典を著作、出版した被告らに対し、本件事典の著作、出版が後記二ないし六のとおり原告らの著作権を侵害すると主張して、不法行為に基づく損害賠償の支払を求める事案である。

二  版画の写真に関する著作権侵害について

1  原告らの主張

(一) 別表(一)の各写真(以下、これらを「本件写真(一)」という。)及び別表(二)の各写真のうち番号三〇二、六三四、六八九ないし六九二を除くもの(以下、これらを「本件写真(二)」という。)は、いずれも、版画を撮影したものであるが、版画を撮影するに当たっては、個々の作品の芸術的特性や個性を理解した上、それを表現するために、様々な技術的配慮をすることが不可欠であるから、そこには、単なる物理的機械的な処理を超えた精神的な作用が存する。したがって、本件写真(一)及び(二)は著作物であるといえる。

(二) 本件写真(一)は、原告会社の発意に基づいて、原告会社の従業員であった原告田中が、本件雑誌に掲載するために、原告会社の職務として撮影したものである。このうち、別表(一)に「同一機会」と記載されていないものは、本件雑誌に掲載され、原告会社名義の下に公表された。別表(一)に「同一機会」と記載されているものは、別表(一)の写真と同一機会に原告田中が撮影したものが本件雑誌に掲載されたが、別表(一)の写真は掲載されていない。しかし、これらは、本件雑誌に掲載するために撮影されたから、「原告会社名義の下に公表するもの」ということができる。したがって、原告会社が本件写真(一)の著作権者である。

本件写真(二)は、原告田中が、原告会社退社後、本件雑誌に掲載するために撮影したものであるから、原告田中が本件写真(二)の著作権者である。

(三) 本件写真(一)及び(二)は、いずれも、本件事典に掲載された。この被告らの行為は、原告会社又は原告田中が有する著作権(複製権)を侵害する行為であり、右行為につき、被告室伏には、故意が、被告会社には、故意又は少なくとも過失が存する。

2  被告らに共通の主張

(一) 本件写真(一)及び(二)は、いずれも平面的な版画をできるだけ忠実に再現したものであるから、思想又は感情を創作的に表現したものではなく、著作物ではない。

(二) 本件写真(二)のうち、番号三一六、四六二、五四六を原告田中が撮影したことは認めるが、その余の本件写真(一)及び(二)を原告田中が撮影したことは否認する。本件雑誌は、原告田中が撮影した版画の写真を掲載していただけでなく、画廊や作家から借りた撮影フィルム等や被告室伏が所持していた撮影フィルム等を使用して版画の写真を掲載していたから、本件写真(一)及び(二)のうちに本件雑誌に掲載されたものがあるとしても、そのことから、それを原告田中が撮影したということはできない。

(三) 本件写真(一)及び(二)のうち、原告田中が撮影したものについては、その撮影は、被告室伏の企画に基づき、その指示の下でされたから、著作物性があるとすれば、被告室伏が著作権者である。原告会社や原告田中が著作権者であるということはない。

(四) 本件写真(二)のうち、番号三一六、四六二、五四六を本件事典に掲載したことは認めるが、その余の本件写真(一)及び(二)を本件事典に掲載したことは否認する。被告室伏は、画廊や作家から借りた撮影フィルム等や被告室伏が所持していた撮影フィルム等を使用したり、新たに写真を撮影して、本件事典に版画の写真を掲載したものであって、本件写真(一)及び(二)のうち番号三一六、四六二、五四六以外のものを本件事典に掲載したことはない。また、仮に、番号三一六、四六二、五四六について、原告田中に著作権があるとしても、被告らは、原告田中から複製の許諾を得た。

(五) 被告らの故意、過失は争う。

3  被告会社の主張

(一) 本件写真(一)について原告会社に著作権があり、それを本件事典に掲載したことがあったとしても、被告会社は、原告会社において本件写真(一)の複製を許諾する権限を有する被告室伏から許諾を得た。

仮に被告室伏に本件写真(一)の複製を許諾する権限がないとしても、原告会社は、被告室伏に「編集長」という名称の使用を許可して、本件写真(一)の複製を許諾する権限を有するかのような表示をしていたところ、被告会社は、右表示を信じて、被告室伏から許諾を得た。

(二) 本件写真(二)について原告田中に著作権があり、それを本件事典に掲載したことがあったとしても、被告会社は、原告田中から複製の許諾を得た。

三  作家のポートレート写真等に関する著作権侵害について

1  原告らの主張

(一) 別表(三)の各写真(以下、これらを「本件写真(三)」という。)は、原告会社の発意に基づいて、原告会社の従業員であった原告田中が、本件雑誌に掲載するために、原告会社の職務として撮影したものである。これらは、本件雑誌に掲載するために撮影されたから、「原告会社名義の下に公表するもの」ということができる。したがって、原告会社が本件写真(三)の著作権者である。

別表(四)の各写真及び別表(二)記載の番号三〇二、六三四、六八九ないし六九二の各写真(以下、これらを「本件写真(四)」という。)は、原告田中が、本件雑誌に掲載するために撮影したものであるから、原告田中が本件写真(四)の著作権者である。

(二) 本件写真(三)及び(四)は、いずれも、本件事典に掲載された。この被告らの行為は、原告会社又は原告田中が有する著作権(複製権)を侵害する行為であり、右行為につき、被告室伏には、故意が、被告会社には、故意又は少なくとも過失が存する。

2  被告らに共通の主張

(一) 本件写真(三)のうち「李禹煥」以外の写真を原告田中が撮影したこと並びに本件写真(四)のうち別表(四)の「柄沢斉」以外の写真及び別表(二)の番号三〇二、六八九ないし六九二の各写真を原告田中が撮影したことは認めるが、別表(二)の番号六三四の写真を原告田中が撮影したことは否認し、本件写真(三)のうち「李禹煥」の写真及び別表(四)の「柄沢斉」の写真を原告田中が撮影したことは知らない。

(二) 本件写真(三)及び(四)のうち、原告田中が撮影したものについては、その撮影は、被告室伏の企画に基づき、その指示の下でされたから、被告室伏が著作権者である。原告会社や原告田中が著作権者であるということはない。

(三) 本件写真(三)のうち「李禹煥」以外の写真並びに本件写真(四)のうち別表(四)の「柄沢斉」以外の写真及び別表(二)の番号三〇二、六八九ないし六九二の各写真を本件事典に掲載したことは認めるが、その余の本件写真(三)及び(四)を本件事典に掲載したことは否認する。また、仮に、本件写真(四)について、原告田中に著作権があるとしても、被告らは、原告田中から複製の許諾を得た。

(四) 被告らの故意、過失は争う。

3  被告会社の主張

本件写真(三)について原告会社に著作権があり、それを本件事典に掲載したことがあったとしても、被告会社は、原告会社において本件写真(三)の複製を許諾する権限を有する被告室伏から許諾を得た。

仮に被告室伏に本件写真(三)の複製を許諾する権限がないとしても、原告会社は、被告室伏に「編集長」という名称の使用を許可して、本件写真(三)の複製を許諾する権限を有するかのような表示をしていたところ、被告会社は、右表示を信じて、被告室伏から許諾を得た。

四  美術館及び版画工房に関する記事の著作権及び編集著作権侵害について

1  原告らの主張

(一) 「美術館と版画上」は本件雑誌四七号に、「美術館と版画下」は本件雑誌四八号に、それぞれ掲載された記事で、日本全国の公立の美術館三九館に対して行ったアンケート結果に基づき、それらの美術館について、(1) 所在地と電話番号、(2) 主な収蔵作家とその件数、(3) 版画の年間購入予算とそれが予算全体に占める割合、(4) 年間入場者数と展覧会数、(5) 過去五年間の版画展と今後の予定等を記載したものである。

「版画工房への質問」(以下、これと「美術館と版画上」及び「美術館と版画下」を、「本件美術館等記事」という。)は、本件雑誌四六号に掲載された記事で、日本全国の版画工房二七房に対して行ったアンケート結果に基づき、それらの版画工房について、(1) 住所と電話番号、(2) 代表者、(3) 工房を始めた年月、(4) 刷師、(5) 刷っている版種、(6) 刷っている作家、(7) 大きさ、(8) プレス機の種類と台数、(9) 使用している主なインキ、(10)使用している主な紙、(11)工房の経営理念と展望を記載したものである。

(二) 本件美術館等記事は、それ自体著作物であるとともに、素材の選択、配列に創作性があるということができるから、編集著作物でもある。

(三) 本件美術館等記事のうち「美術館と版画上」及び「美術館と版画下」は、原告会社の発意に基づいて、原告会社の従業員であった内野正樹及び西田泰也が、原告会社の職務として作成したものであり、「版画工房への質問」は、原告会社の発意に基づいて、原告会社の従業員であった高橋常昭及び内野正樹が、原告会社の職務として作成したものである。また、本件美術館等記事は、本件雑誌に掲載され、原告会社名義の下に公表された。したがって、本件美術館等記事の著作権及び編集著作権は、原告会社が有する。

(四) 本件美術館等記事のうち「美術館と版画上」及び「美術館と版画下」の右(一)(1) ないし(5) の各項目の記載は、「美術館と版画」という名で、「版画工房への質問」は、「日本の版画工房」という名で、それぞれ本件事典に掲載された。この被告らの行為は、原告会社が有する著作権(複製権)及び編集著作権(複製権)を侵害する行為であり、右行為につき、被告室伏には、故意が、被告会社には、故意又は少なくとも過失が存する。

2  被告らに共通の主張

(一) 本件美術館等記事が、アンケート結果に基づいて作成され、本件雑誌に掲載されたことは認める。

(二) 本件美術館等記事に記載されているのは、単なるデータにすぎないから、本件美術館等記事は著作物ではない。仮に、著作物ということができる部分があったとしても、それは、各美術館、版画工房の回答をそのまま掲載したものであるから、各美術館、工房が著作権者である。

本件美術館等記事のうち「美術館と版画上」及び「美術館と版画下」は、日本の公立美術館について基礎的な事項を記載したにすぎず、また、「版画工房への質問」は、日本の代表的な版画工房について基礎的な事項を記載したにすぎないから、素材の選択配列に創作性があるということはできない。したがって、本件美術館等記事は編集著作物ではない。また、アンケートをして本件美術館等記事を作成したのは、被告室伏であるから、仮に本件美術館等記事が編集著作物であるとすると、その著作権者は、被告室伏であって、原告会社ではない。

(三) 本件美術館等記事のうち「美術館と版画上」及び「美術館と版画下」の右(一)(1) ないし(5) の各項目の記載が「美術館と版画」という名で、「版画工房への質問」が「日本の版画工房」という名で、それぞれ本件事典に掲載されたことは認める。

(四) 被告らの故意、過失は争う。

3  被告会社の主張

本件美術館等記事について原告会社に著作権又は編集著作権があるとしても、被告会社は、原告会社において本件美術館等記事の複製を許諾する権限を有する被告室伏から許諾を得た。

仮に被告室伏に本件美術館等記事の複製を許諾する権限がないとしても、原告会社は、被告室伏に「編集長」という名称の使用を許可して、本件美術館等記事の複製を許諾する権限を有するかのような表示をしていたところ、被告会社は、右表示を信じて、被告室伏から許諾を得た。

五  「棟方版画贋作の背景」以下四編の記事及び図版に関する編集著作権及び著作権侵害について

1  原告らの主張

(一) 「棟方版画贋作の背景」以下四編の記事及び図版(以下「本件棟方贋作記事」という。)は、本件雑誌三一号に掲載された。これは、当時発生した棟方志功の版画の贋作事件を素材として、様々な立場、視点からの贋作に対する意見を紹介するとともに、贋作判定の実際的知識を提供しようとしたものであり、瀬木慎一「棟方版画贋作の背景」(美術評論家による棟方志功の版画の贋作事件についての評釈)、平本貴史「裁かれるべきは誰か?」(右事件を取材した記者が取材の経過、事件の関係者の立場の相違等について記述したもの)、編集部「棟方版画真贋鑑別のキメ手」(棟方志功の版画の真贋判定についての説明)、笹島喜平「天才は恐ろしい」(棟方志功の弟子が棟方志功の版画の特性について述べたもの)という四編の記事と、棟方志功の真作と贋作を比較対照した図版からなる。これらの記事と図版を選択して配列したことには創作性があるから、本件棟方贋作記事には、編集著作権が存する。

(二) 本件棟方贋作記事は、原告会社の発意に基づいて、原告会社の従業員であった杉浦清が、原告会社の職務として作成したものであり、本件雑誌に掲載され、原告会社名義の下に公表された。したがって、本件棟方贋作記事の編集著作権及び編集部「棟方版画真贋鑑別のキメ手」の著作権は、原告会社が有する。

(三) 本件事典には、「版画の真贋」という項目がある。そこでは、棟方志功の版画の贋作事件を素材として、版画の真贋についての記述がされており、本件棟方贋作記事のうち編集部「棟方版画真贋鑑別のキメ手」をほとんどそのまま掲載しているほか、図版も、本件棟方贋作記事と同じものを使用している。したがって、本件事典に右「版画の真贋」を掲載した被告らの行為は、本件棟方贋作記事の編集著作権(複製権)及び編集部「棟方版画真贋鑑別のキメ手」の著作権(複製権)を侵害する行為であり、右行為につき、被告室伏には、故意が、被告会社には、故意又は少なくとも過失が存する。

2  被告らに共通の主張

(一) 本件棟方贋作記事が本件雑誌に掲載されたことは認める。

(二) 本件棟方贋作記事は、素材の選択配列に創作性がないから、編集著作物ではない。また、本件棟方贋作記事を作成したのは、被告室伏であるから、仮に本件棟方贋作記事が編集著作物であるとすると、その著作権者は、被告室伏であって、原告会社ではない。さらに、編集部「棟方版画真贋鑑別のキメ手」は、被告室伏の著作に係るものであるので、その著作権者は、被告室伏であって、原告会社ではない。

(三) 本件事典に「版画の真贋」という項目があり、その中に編集部「棟方版画真贋鑑別のキメ手」の一部を載せたことは認める。右項目は、本件棟方贋作記事とは全く異なるもので、本件棟方贋作記事の編集著作権を侵害することはない。

(四) 被告らの故意、過失は争う。

3  被告会社の主張

編集部「棟方版画真贋鑑別のキメ手」について原告会社に著作権があるとしても、被告会社は、原告会社において右記事の複製を許諾する権限を有する被告室伏から許諾を得た。

仮に被告室伏に右記事の複製を許諾する権限がないとしても、原告会社は、被告室伏に「編集長」という名称の使用を許可して、右記事の複製を許諾する権限を有するかのような表示をしていたところ、被告会社は、右表示を信じて、被告室伏から許諾を得た。

六  「版画のオリジナルと複製」以下二編の記事及び図版に関する編集著作権侵害について

1  原告らの主張

(一) 「版画のオリジナルと複製」以下二編の記事及び図版(以下「本件版画複製記事」という。)は、本件雑誌四一号に掲載された。これは、版画における「複製」に対する正しい認識を啓蒙する意図の下に企画されたもので、益田祐作「版画のオリジナルと複製」(版画工房の立場から、版画における「複製」概念について述べるとともに、製作者のモラルに言及し、更に複製峻別の実例を明らかにしたもの)、小野忠重「版画のオリジナルとは」(作家の立場から、複製制作過程へのかかわりの重要性を指摘したもの)及び複製峻別の実例に関する図版からなる。これらの記事と図版を選択して配列したことには創作性があるから、本件版画複製記事には、編集著作権が存する。

(二) 本件版画複製記事は、原告会社の発意に基づいて、原告会社の従業員であった伊藤隆夫、高橋常昭及び内野正樹が、原告会社の職務として作成したものであり、本件雑誌に掲載され、原告会社名義の下に公表された。したがって、本件版画複製記事の編集著作権は、原告会社が有する。

(三) 本件事典には、「エスタンプ」という項目がある。この項目では、まず版画における「複製」という用語の問題を取り上げ、続いて「複製」に従来の固定観念にとらわれない評価を与えるとともに、モラルの問題に言及し、本件版画複製記事と同じ図版を用いて実例が紹介されている。したがって、本件事典に右「エスタンプ」を掲載した被告らの行為は、本件版画複製記事の編集著作権(複製権)を侵害する行為であり、右行為につき、被告室伏には、故意が、被告会社には、故意又は少なくとも過失が存する。

2  被告らに共通の主張

(一) 本件版画複製記事が本件雑誌に掲載されたことは認める。

(二) 本件版画複製記事は、素材の選択配列に創作性がないから、編集著作物ではない。また、本件版画複製記事を作成したのは、被告室伏であるから、仮に本件版画複製記事が編集著作物であるとすると、その著作権者は、被告室伏であって、原告会社ではない。

(三) 本件事典に「エスタンプ」という項目があることは認める。この項目は、本件版画複製記事とは全く異なるもので、本件版画複製記事の編集著作権を侵害することはない。

(四) 被告らの故意、過失は争う。

七  損害について

1  原告らの主張

(一) 原告会社の損害

(1)  主位的主張

本件事典の発行部数は二万五〇〇〇部を下らず、単価は一冊一万一〇〇〇円であり、利益率は二割六分を下らないから、本件事典の出版によって被告らが得た利益の額は、七一五〇万円を下らない。したがって、この利益の額が原告会社の損害額と推定される。

(2)  予備的主張一

右(1) のとおり、本件事典の出版によって被告らが得た利益の額は、七一五〇万円を下らず、本件事典の著作、出版により原告らの著作権が侵害された写真の総数(五四三)に占める原告会社の写真数(一九五)の割合(約三六パーセント)及びその他の侵害された著作権の内容からすると、原告会社の損害は右七一五〇万円の四割である二八六〇万円を下らない。

(3)  予備的主張二

原告会社が著作権を有する写真一点の使用料相当額は、二万円を下らないから、原告会社は、二万円に、以上のとおり著作権を侵害された写真の数一九五を乗じた三九〇万円の損害を被り、さらに、その他の著作権侵害による損害は二〇〇万円を下らないから、原告会社の損害は合計五九〇万円を下らない。

(二) 原告田中の損害

原告田中が著作権を有する写真一点の使用料相当額は、二万円を下らないから、原告田中は、二万円に、以上のとおり著作権を侵害された写真の数三四八を乗じた六九六万円の損害を被った。

2  被告らの主張

原告らの主張は争う。

第三当裁判所の判断

一  事実関係

1  証拠(甲一八、二〇、二四、丙一、三、丙五の一ないし五二、丙六の一、二、丙二〇、証人高橋常昭、証人室伏くるみ、原告田中誠一、被告室伏哲郎)と弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

(一) 原告会社代表者であった阿部一郎(以下「阿部」という。)は、被告室伏と中学校の同級生であったところ、昭和四七年に、被告室伏を訪ね、原告会社が印刷から出版の分野に進出することについての協力を求めた。被告室伏は、評論家として執筆等を行い、広くその名を知られていたため、阿部が被告室伏に協力を求めたものである。

(二) 被告室伏は、多忙であるので原告会社のためには月に数回程度の活動しかできないこと、原告会社は経費を負担するが、企画編集取材は、被告室伏に任すこと等の条件を出し、これらが満たされるのであれば協力する旨述べたところ、阿部は、その条件を承諾した。

そこで、被告室伏は、同人が趣味で収集していた版画について季刊の雑誌を発行することを提案し、阿部の了承を得たので、妻の室伏くるみ(以下「くるみ」という。)とともに、創刊号の企画をたて、表紙のデザインの依頼、版画の撮影、原稿の執筆依頼、広告取り等をした。これらに原告会社の従業員が関与することはなく、被告室伏とくるみの二人で行った。そして、昭和四八年四月一日、本件雑誌一号が原告会社から出版された。本件雑誌一号の奥付には、「発行人阿部一郎」「編集人室伏哲郎」「阿部出版」と記載されており、二号から四四号までの奥付には、「発行人阿部一郎」「編集人室伏哲郎」「発行所阿部出版」と記載されており、四五号から五二号までの奥付には、「発行人阿部秀一」「編集人室伏哲郎」「発行所阿部出版」と記載されていた。また、本件雑誌の背表紙には「阿部出版」と記載されていた。

(三) 本件雑誌一号出版後、二号出版(昭和四八年七月一日)までの間に、被告室伏とくるみが面接して、編集補助者を採用した。採用された者は、原告会社の従業員となった。そのときに、原告田中は、カメラマンとして採用され、昭和五五年八月まで原告会社の従業員であった。

被告室伏は、二号以降においても、雑誌の企画を決定し、くるみや編集補助者に指示して、雑誌を製作した。雑誌の製作態勢が整うようになると、編集会議が開かれるようになったが、これは、被告室伏が編集補助者らに雑誌の企画について説明し、指示を与えるというものであった。

原告会社は、編集補助者の給料を初め、本件雑誌の編集、出版に要する経費を負担し、自己の計算で本件雑誌を出版していた。

(四) 被告室伏は、原告会社から毎月定額の「原稿料」を受け取っていた。当初は一か月約二〇万円であったが、後に約三〇万円になった。くるみは、原告会社から報酬等を何ら受け取っていない。

(五) 昭和五九年後半ころから、原告会社において、役員や被告室伏が出席して、本件雑誌の損益や売上数量などを報告する会議が開かれるようになった。

(六) 被告室伏は、昭和六一年に、五二号を最後として本件雑誌の編集に携わることを止めた。

2  右1認定のとおり、原告会社は、本件雑誌の編集、出版に係る経費を支出し、自己の計算で本件雑誌を出版していたのであるから、経費の額や本件雑誌の収支については、常に関心を持ち把握していたものと推認することができる。しかし、右1認定の本件雑誌が発刊された経緯やその後の編集作業の状況及び右1(五)認定の会議においても、対象とされたのは雑誌の損益や売上数量などであったことを総合すると、原告会社は、雑誌の編集方針や内容については、被告室伏に任せていたものと認められ、原告会社が、それについてまで関与していたとは認められない。証人高橋常昭の右認定に反する証言及び甲二四の記載は信用することができない。

また、右1認定の本件雑誌が発刊された経緯や被告室伏に「原稿料」が支払われていたこと等右1認定の事実によると、原告会社と被告室伏との関係は、雇用契約ではなく、準委任契約であったと認めることが相当であり、これに反する証人高橋常昭の証言及び甲二四の記載は信用することができない。

二  前記第二の二の著作権侵害に基づく請求について

1  本件写真(一)及び(二)の著作物性について

(一) 証拠(甲三の五五、五七、二三五、三二九、三三一、三六四、三九三、四〇一、甲二四、二五、証人高橋常昭、原告田中誠一)と弁論の全趣旨によると、本件写真(一)及び(二)は、原作品がどのようなものかを紹介するために版画をできるだけ忠実に再現することを目的として撮影された版画全体の写真であること、これらの対象となった版画は、おおむね平面的な作品であるが、番号五五、五七、二三五、三二九、三三一、三六四、三九三、四〇一については凹凸の部分があること、版画をできるだけ忠実に再現した写真を撮影するためには、光線の照射方法の選択と調節、フィルムやカメラの選択、露光の決定等において、技術的な配慮をすることが必要であること、以上の事実が認められる。

(二) ところで、本件写真(一)及び(二)のように原作品がどのようなものかを紹介するための写真において、撮影対象が平面的な作品である場合には、正面から撮影する以外に撮影位置を選択する余地がない上、右認定のような技術的な配慮も、原画をできるだけ忠実に再現するためにされるものであって、独自に何かを付け加えるというものではないから、そのような写真は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法二条一項一号)ということはできない。

なお、原告らは、平面的な作品を撮影する場合であっても、原画の芸術的特性を理解して、それを表現することが不可欠である旨主張し、本件写真(一)及び(二)の個々の作品について、原画の芸術的特性やそれを表現するために工夫した点について主張しており、また、証人高橋常昭及び原告田中誠一は、平面的な作品を撮影する場合であっても原画の芸術的特性を理解して、それを表現することが必要である旨供述し、甲二四、二五にも同趣旨の記載があるが、そのようなことがあったとしても、それは、原画をできるだけ忠実に再現するためのものであると認められる(原告田中誠一本人尋問第一回調書一三六項)から、これらの主張や証拠も右認定を覆すに足りるものではない。

(三) また、右認定のとおり、本件写真(一)及び(二)の撮影対象には、完全に平面ではなく、凸凹があるものがあるが、証拠(甲三の五五、五七、二三五、三二九、三三一、三六四、三九三、四〇一)と弁論の全趣旨によると、それらの凸凹はわずかなものであり、それがあることによって撮影位置を選択することができるとも認められないから、これらの完全に平面ではない作品を撮影した写真についても著作物性を認めることはできない。

2  そうすると、前記第二の二の著作権侵害に基づく請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

三  前記第二の三の著作権侵害に基づく請求について

1  本件写真(三)及び(四)の撮影者及び本件事典への掲載について

本件写真(三)のうち「李禹煥」以外の写真を原告田中が撮影したこと、本件写真(四)のうち別表(四)の「柄沢斉」以外の写真及び別表(二)の番号三〇二、六八九ないし六九二の各写真を原告田中が撮影したこと並びにこれらの写真が本件事典に掲載されたことは、当事者間に争いがない。

証拠(甲二二の一八、二三、甲二三の一九、二四)と弁論の全趣旨によると、本件写真(三)のうち「李禹煥」の写真及び本件写真(四)のうち別表(四)の「柄沢斉」の写真を原告田中が撮影したこと並びにこれらの写真が本件事典に掲載されたことが認められる。

原告田中誠一は、本人尋問において、本件写真(四)のうち別表(二)の番号六三四の写真を撮影したと供述するが、その供述は、撮影した場所も特定できないあいまいなものである上、右撮影の事実を裏付ける他の証拠もないから、いまだ本件写真(四)のうち別表(二)の番号六三四の写真を原告田中が撮影したことを認めることはできず、これが本件事典に掲載されたことについても、これを認めるに足りる証拠はない。

2  本件写真(三)及び(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)の著作権者について

(一) 証拠(原告田中誠一)と弁論の全趣旨によると、本件写真(三)は、原告田中が原告の従業員であった間に、本件写真(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)は、原告田中が原告会社を退社した後に、それぞれ原告会社が出版する本件雑誌に掲載するために撮影したものと認められる。

(二) 右(一)認定の事実によると、本件写真(三)は、原告会社の職務に従事する者が職務上作成したものということができる。しかし、前記一認定のとおり本件雑誌の編集は被告室伏に任されていたのであり、この事実に証拠(原告田中誠一)を総合すると、原告田中は、被告室伏の編集方針に従い、同人の指示によって、本件写真(三)を撮影したものと認めることができ、そうである以上、原告会社の発意に基づいて撮影したものとは認められない。そうすると、原告会社が本件写真(三)の著作権者であるとは認められない。

(三) 前記一認定の事実に証拠(原告田中誠一)を総合すると、本件写真(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)についても、原告田中は、被告室伏の編集方針に従い、同人の指示によって、撮影したものと認めることができるが、証拠(原告田中誠一、被告室伏哲郎)によると、原告田中は、写真の構図等具体的にどのような写真を撮るかについては自らの判断で決定して撮影したものと認めることができ、そこまで被告室伏が指示したものではない。したがって、本件写真(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)の著作権者は原告田中であると認めるのが相当であり、被告室伏が著作権者である旨の被告らの主張は採用できない。

3  本件写真(四)の著作権侵害について

証人室伏くるみは、本件写真(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)を本件事典に掲載するに当たって被告田中の承諾を得た旨の証言をするが、同証言は、いつどのようにして原告田中の承諾を得たかあいまいであり、右証言に反する原告田中誠一の本人尋問における供述を総合すると、右証言から、本件写真(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)を本件事典に掲載するに当たって被告田中の承諾を得たことを認めることはできず、他にこの事実を認めるに足りる証拠はないから、右写真を本件事典に掲載した被告らの行為は、原告田中が有する著作権(複製権)を侵害する行為である。

4  故意、過失について

(一) 右2(三)認定の事実に証拠(原告田中誠一)と弁論の全趣旨を総合すると、被告室伏は、原告田中が本件写真(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)を撮影したこと及び本件事典に掲載するに当たって同原告の承諾を得ていないことを知っていたものと認められるから、被告室伏には、故意が認められる。

(二) 証拠(乙五、乙六の一、二、証人新井正光)によると、被告会社において、本件事典出版の担当者であった新井正光(以下「新井」という。)は、本件事典のための資料の収集を行っていたものと認められるから、本件写真(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)について、これらの写真は本件事典のために新たに撮影したものではなく、既存の写真を利用したことを知っていたものと推認することができる。したがって、新井としては、撮影者の承諾を得ているかなど著作権法上問題がないかどうかについて注意すべき義務があったものというべきである。しかるところ、新井が、本件写真(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)について、撮影者の承諾を得ているかなど著作権法上問題がないかどうかを調査したことを認めるに足りる証拠はないから、新井は、右義務を怠り、その結果、原告田中の承諾のない本件写真(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)が本件事典に掲載されたものと認められる。したがって、新井に過失があったということができ、被告会社も、右3の著作権侵害について責任がある。

5  損害について

証拠(検甲一、証人新井正光)によると、本件事典は、定価一万一〇〇〇円、頁数は約一〇〇〇頁であること、本件事典は、一万八〇〇〇部刷られたこと、本件事典のうち本件写真(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)は、全部合わせても、本件事典中のせいぜい二頁半程度であることが認められる。また、証拠(検甲一、被告室伏哲郎)によると、本件写真(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)は、作家のポートレート及び制作風景であるが、被告室伏の紹介があって初めてこれらの写真を撮影することができたことが認められる。以上のような事情を総合すると、本件写真(四)(別表(二)の番号六三四の写真を除く。)の使用料相当額は、全部で一〇万円と認めることが相当である。

四  前記第二の四の著作権侵害に基づく請求について

1  本件美術館等記事が、アンケート結果に基づいて作成され、本件雑誌に掲載されたことは、当事者間に争いがない。

2  前記一認定の事実に証拠(丙一、証人高橋常昭、証人室伏くるみ)を総合すると、本件美術館等記事の製作は、被告室伏が、企画をたて、アンケート先や質問事項を決めた上で行われたもので、美術館及び版画工房に対するアンケートの事務は、原告会社の従業員が担当したことが認められ、証人高橋常昭の証言中右認定に反する部分は信用することができない。

そうすると、本件美術館等記事について、アンケート先や質問事項の選択配列に創作性があり、編集著作物であるということができるとしても、それを著作したのは、被告室伏であると認められる。そして、前記一認定のとおり、被告室伏は、原告会社の従業員でなく、原告会社との準委任契約に基づいて本件雑誌を製作していた者であるから、被告室伏が著作したものについて原告会社が著作権を取得することはない。

また、証拠(甲八、九、一一)と弁論の全趣旨によると、本件美術館等記事の各項目のうち、「版画工房への質問」の「工房の経営理念と展望」を除く各項目は、住所、電話番号等の事実に関するデータにすぎず、それに著作物性を認めることはできない。「版画工房への質問」の「工房の経営理念と展望」は、各版画工房においてアンケートに答えて記載したものをそのまま転載したものと推認することができるから、それを記載した者に著作権があり、それについて原告会社に著作権があるということはない。

3  そうすると、前記第二の四の著作権侵害に基づく請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

五  前記第二の五の著作権侵害に基づく請求について

1  本件棟方贋作記事が本件雑誌に掲載されたことは、当事者間に争いがない。

2  前記一認定の事実に証拠(丙一、証人高橋常昭、証人室伏くるみ、被告室伏哲郎)を総合すると、本件棟方贋作記事は、被告室伏が、おおまかな記事の方針、執筆者を決めて、瀬木慎一らに執筆の依頼をしたものであること、図版は、くるみが被告室伏の製作意図に基づいて選択し、レイアウトを指示したものであること、編集部「棟方版画真贋鑑別のキメ手」は、被告室伏が執筆したが、被告室伏は、他にも同人の名前が出ている記事があるので、雑誌を編集している者がその雑誌に何回も名前を出すことは好ましくないと考えて、「編集部」と表示したこと、以上の事実が認められ、証人高橋常昭の証言中右認定に反する部分は信用することができない。

そうすると、本件棟方贋作記事について、記事や図版の選択配列に創作性があり、編集著作物であるということができるとしても、それを著作したのは、被告室伏であると認められるし、編集部「棟方版画真贋鑑別のキメ手」も、被告室伏の著作に係るものである。そして、被告室伏が著作したものについて原告会社が著作権を取得することはないことは、前示のとおりである。

3  そうすると、前記第二の五の著作権侵害に基づく請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

六  前記第二の六の著作権侵害に基づく請求について

1  本件版画複製記事が本件雑誌に掲載されたことは、当事者間に争いがない。

2  前記一認定の事実に証拠(丙一、証人高橋常昭、証人室伏くるみ、被告室伏哲郎)を総合すると、本件版画複製記事は、被告室伏が、おおまかな記事の方針、執筆者を決めて、益田祐作らに執筆の依頼をしたものであること、図版は、くるみが被告室伏の製作意図に基づいて選択し、レイアウトを指示したものであること、以上の事実が認められ、証人高橋常昭の証言中右認定に反する部分は信用することができない。

そうすると、本件版画複製記事について、記事や図版の選択配列に創作性があり、編集著作物であるということができるとしても、それを著作したのは、被告室伏であると認められる。そして、被告室伏が著作したものについて原告会社が著作権を取得することはないことは、前示のとおりである。

3  そうすると、前記第二の六の著作権侵害に基づく請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

七  よって、本訴請求は、原告田中が被告らに対し本件写真(四)の著作権侵害による損害金一〇万円及びこれに対する不法行為の後である昭和六三年二月一九日から民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余は棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 森義之 裁判官 榎戸道也 裁判官 中平健)

別表 〈省略〉

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